今回はアートとエロの話。
久しぶりに「響け! ユーフォニアム」を観た際に「楽器は男根!」と言っている人がいたことを思い出して記事にしてみた。
故にお子ちゃまはご遠慮願いたい。それでも見たい?「チョットだけヨ!」
別段、イカガワシクもないがクリーンでもないことを前置きしておく。
「響け! ユーフォニアム」と「裸のマハ」
まずはアートとエロの違いから。
額に入れて飾りたいのがアート
ベッドの下に隠したいのがエロ
違いはたったこれだけ。客観性と絶対性よりも認識の問題だ。では「裸のマハ」と比較しながら「響け! ユーフォニアム」のエロについて書いていこう。
実はどちらも感度が高い。では何が違うのか。
「感性」が違うのだ。
「感性」とは「感じ方の方向」「感じ方の矢印」である。「感じ方のベクトル」と表現すればピンとくるだろうか。「感度」は「感じるレベル」だ。
「サラダ記念日」における「感度」と「感性」
いいねと言われたことへの強い関心が「感度」
喜びを見出し「記念日」にするのが感性
何気ない食事の中で相手の好反応を鋭敏に察知する。これは高い感度ならでは。
それを喜び記念日にしようと思うのが感性のなせる技。
「感度」と「感性」をひっくるめて「感性が豊か」と表現する場合もあるだろう。
当ブログのテーマである「好ましい言葉選び」。そのテーマに繋がることだが、人にとって、この「感性」というものは非情に大切。
「感性」によって人は歩むべき道を選択している。
有害性比較
くだんの人は「響け! ユーフォニアム」がベッドの下に隠すべきモノなのに、勉強机の上に置いているとはケシカラン!と怒り「白ポスト」に投げ込みたいのだろう。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
白ポスト(しろポスト)は、日本において有害図書の投入を呼び掛ける白い箱である。
広場のゴミ箱や列車の網棚に捨てられたポルノ雑誌などを投入し、子供の目に触れないようにするため駅前に設置される。
同じような投函口のある郵便ポストが赤いことから、それに対して名付けられた。
危機意識そのものは私に近い。私は「時代の気分で言葉と遣い方を変えようが構わない」という意見に対して危機意識を持っている。
とは言え「響け! ユーフォニアム」を「白ポスト」に投げ込みたいとは思わない。
「スカートの中はケダモノでした。」や「ひめゴト」はメタファーではなくダイレクトに「男根」なので、どうせならそちらをやり玉にあげたほうが、作戦としては良かったかも知れない。
「お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ」のOPも大概酷い。こちらはリコーダーを完全に「男根」扱いしている。
しかも、メインキャラクターの声優に当時十三歳と十四歳の女の子がいたとなれば、自称フェミニストからすれば格好の批判対象ではないか。私の感性ではOPは酷いものの「おにあい」はよくできたコメディ作品。
「響け! ユーフォニアム」を「白ポスト」に投げ込みたい人は、一方で「Room Mate」を好きになることもありうる。話数が進むごとに「全裸に近付く」EDは必見。
エロ認識の考察
「響け! ユーフォニアム」にエロがあるとすれば、それは楽器を抱えていることでない。
私ならこう考える。エロ度が高まる順に並べてみよう。
1.抑揚のある脚
2.宝石のような瞳
3.艶とコシのある髪
これらにエロが宿っていると。「エロがあるとすれば」ということなので、これらに該当していても性的アピールの有無は感性に委ねられてしまう。
とりあえず、原作の絵と比べてみよう。
例えばオーバーニーソックスは「脚部の抑揚と視線誘導」という複合した効果がある。その効果は、いわゆる二次元に限らない。
ギャルがアイメイクに力を入れるのは「瞳こそ強い印象を与えるパーツ」だからだ。いわゆる「マスク美人」も瞳が強調されることによる認識。ただ、ここまで瞳を強調されると怖くなる。
中高年女性が「おばさんパーマ」になってしまうのは「減っていくコシとボリュームを補う苦肉の策」。
頭皮が目立ちはじめた。でも毎回ブローでごまかすのも大変だし限界がある。パーマなんてしたことなかったけど背に腹はかえられない。そんな心情だろう。
アニメ版の絵は瞳と髪の印象が非情に強い。これをエロいと見る人もいるかも知れない。私は美しいと思う。
「裸のマハ」の場合。「着衣のマハ」の存在が「裸のマハ」を殊更エロを掻き立てる。私は寧ろ「着衣のマハ」にエロスを見出す。これは私の感性。
上の動画の男性を観て「エロい」と認識するのはゲイの感性。
「素晴らしい身体。ここまでの身体を作るのに相当努力しただろうな。自分も頑張ろう」と認識するのが一般トレーニーの感性。私は後者。もっともこの動画は「かなり狙っている」が。
松尾幸作さんのボディビル大会でのフリーポーズ。
アートかエロかは人それぞれ違うと考えがちだ。しかし、個人内であっても年齢や経験によって変化しうるもの。客観性と絶対性が介在することは非情に少ない。
同人作家の素質
「響け! ユーフォニアム」の楽器は男根のメタファーという感性は、見方を変えれば同人作家の素質アリと捉えることができる。
例えばこんなのはどうだろう。
- 黄前久美子ちゃんが触手化したユーフォニアムに鼻腔から尿道まで、ありとあらゆる穴を責められ快楽堕ちする
- 加藤葉月ちゃんが愛用のチューバに丸呑みされ、媚薬性の粘液で全身犯される
- 吹奏楽部一の巨躯、後藤卓也君が、愛しの長瀬梨子ちゃんの前で、女装した塚本秀一君にトロンボーンで前立腺責めを受けトコロテン(※)してしまう
- 長瀬梨子ちゃんは彼氏を男に犯されたショックから校内売春に走り、むっちりボディ好きだった校長の情婦になり妊娠する
トコロテン(※)肛門から前立腺を刺激され射精すること
性器になぞらえたりエロを見出すのは実は才能なのである。そんな才能を「性的搾取よ!有害だわ!」という方向に持っていくのはもったいない気がしてならない。
リンガ リンガ
「男根」と言えば私はすぐに「リンガ」を思い出す。二十代の頃、インドに強い興味を抱いていた名残だ。仏像にも関心が強く、本を読んだり見に行ったりもしていた。
昔は洋の東西問わず性器や性交を祀る風習はよくあったようで、それだけ生き延びるのが大変だったことを思わせる。
例えばチベット仏教には「歓喜仏」という「性交そのもの」の像がある。ヒンドゥ教の「ミトゥナ像」も「性交」。
神社も性器
日本の神社にも性器や性交のモチーフが見受けられるそうだ。
「注連縄(しめなわ)」は蛇の性交。社殿を中心とする敷地は「子宮」。「参道(さんどう)」はまさに「産道(さんどう)」で、即ち「膣」でもあるとのこと。
このように、至ることろで「性器」モチーフを探し出すことができる。
故に「『響け! ユーフォニアム』の楽器は男根だ」という捉え方があっても良い。ただ、発言の背景から察するに「イチャモン」なのだが。
私の高校時代なんてアホ丸出し。同級生が数学の教科書に載っている数式を「エロいわぁ」と言っているのを聞いて一緒に笑っていたのだから。強引にエロに結びつけるのが楽しかったのだ。
アートとエロ以外のもの
額に入れて飾りたいのがアート
ベッドの下に隠したいのがエロ
このどちらにも分類できないものがある。引き出しにしまったり、デスクの上に置いたり、持ち歩いたり色々。
「響け! ユーフォニアム」の絵は、ベッドの下に隠す程かと問われれば否だろう。かと言って額に入れて飾るのに相応しいとも思えない。
ポスターとして貼る、PCのデスクトップ画面に使う。これくらいが妥当。私の感性ではエロと区分けするのは無理がある。
ポスターとして貼れるのはこんな印象のものだ。
爽快
健康的
くつろぎ
快活
例えば、ビールや南の島へ誘う広告。水着の女性が被写体になる場合が多いものの、エロよりも「爽快」「くつろぎ」といった印象のほうが勝る。
私が額に入れて飾りたい絵
「女性モデル」という条件付きで、私はどんな絵を額に入れて飾りたいのか書いておく。
ジャン=ピエール・カシニョール(JEAN PIERRE CASSIGNEUL)の絵。それと「山本丘人」「柿内青葉」。
ただ、あなたもご存知の通り、これらは既に額に入れて飾られている「アート」である。
ならば、インターネット上にデジタルイラストとして投稿している中からとりあげるのはどうだろうか。以前から私が額に入れて飾りたいと思うデジタルイラストを描いている人がいる。
それは「こもりひっき」という人だ。
この人の絵はとにかく上品。「こんな美しい世界に入り込みたい」そう思わせる引力のようなものがあるのか、いつまでも眺めてしまう。いわゆる「十八禁」の絵は一切描かない人だ。
「こもりひっき」さんの作品はコインガチャにもなっている。
BOOTHでクリアファイルやステッカーも販売しており、先程の「夏の思い出」は実際にあなたの部屋に飾ることができる。
あなたも「こもりひっき」さんの世界を堪能してほしい。そして応援してあげてほしい。
視覚に限らない
額に入れて飾りたいのがアート
ベッドの下に隠したいのがエロ
もちろん比喩なので、音楽に当てはめることもできる。
下記の曲を聴いてあなたはどうしたくなるのか知りたい。「額に入れて飾りたい」か「ベッドの下に隠したい」か「無造作に床に置きたい」か「ポスターとして壁に貼りたい」か、はたまた「白ポストに投函したい」か。
マンボの王様は「チョットだけヨ!」と伊勢佐木町
マンボの王様「ペレス・プラード楽団」の「タブー」を聴いてあなたはどう感じるだろう。
「チョットだけヨ!」をイメージする人は、スピーカーから流すのをためらうだろう。まさに「ベッドの下に隠したい」曲。
次に「伊勢佐木町ブルース」。ベッドの下とまではいかないまでも、引き出しにしまいたい恥ずかしさが付きまとう。と言いつつ、三枚組CD「青江三奈のすべて」を買ってしまう私なのであった。
アルマンド・トロヴァヨーリ(Armando Trovaioli)作曲の「Rossana (Slow Version)」は気怠いムードが漂う。少し「いやらしさ」を感じるのは私だけではないはず。
いわゆる「イタリアーノ・チネ・ジャズ」にはこのような「いやらしさ」がまとわり付いている。「イタリアーノ・チネ・ジャズ」を象徴するのは「ダバダバ」スキャット。あの「11PM」のテーマ曲にも強い影響が見られる。
無粋な女に言われなくても気付いている
「強く儚い者たち」は「白ポスト」に投げ込みたい曲。「あなたのお姫様は誰かと腰を振ってるわ」だと?無粋な女だなお前。これが「した側」と「された側」の両方を経験したことがある私の感性。
「夕立」「あまい果実」のように、そんな無粋なことわざわざ言ってもらわなくても気付いている。スガシカオの曲は女性の心変わりを「察して」いるところが魅力。「黄金の月」や「アシンメトリー」も「察して」いる。
スガシカオで思い出すのは付き合っていたJ○がシークレットライブのチケットを当てたのでZeppに行ったこと。スガシカオが減量や平井堅の顔の話をしたことを覚えている。
その子が「平井堅よりスガシカオのほうがエロい」と言っていた。顔ではなく曲のことだ。
不安になるかクセになるか
「カールマイヤーep」を聴いてあなたは不安になるだろうか。それともクセになるだろうか。
オーネット・コールマン(Ornette Coleman)「Science Fiction」は、とにかく忙しない。それに加え、唐突に挿入される男の呟きと赤ん坊の鳴き声が不気味な印象を植え付ける。私はクセになる質。
ヴァイオリンのハチャメチャ加減が耳に刺さる「Snowflakes And Sunshine」も聴いてみていただきたい。
「girl meets DEADLINE」を毎週聴かされているうちにクセになった。あの頃はきっと耳がおかしかったのだ。
これも上とお仲間。
「戸川純」大好きだった。「玉姫様」とは何か。女性ならすぐにわかるはず。
「有頂天」も大好きだった。部屋にドーンと置いて見せびらかしたい感じ。この動画のセンスはピーター・ガブリエルを彷彿とさせる。アルバム「AISSLE」は聴きまくった。私の中では名盤だ。
「北京ベルリンダブリンリベリア 束になって 輪になって イランアフガン聴かせてバラライカ」作詞した井上陽水は「TOKYO」でも「新宿へ地下鉄がすべる」という洒落た一節をサラリと入れてくる。粋な人だ。
深夜番組のノリを所構わず垂れ流す
深夜のアダルト向け番組のタイトルかと見紛う「マンピーのG☆SPOT」。この曲名が日本中に溢れていた頃は「下品に感じる自分がおかしいのか?」と思ったものの口に出せなかった。
なんせ小学生の頃からサザンオールスターズが大好きで「KAMAKURA」を愛聴していた身としては「あけっぴろげな曲名にしてしまうことこそ魅力なんだ」と思い込もうとしていたから。
今は「紫綬褒章返上しろ桑田佳祐」という気持。水野亜美ちゃんに代わってこう言おう。「水でもかぶって反省しなさい!」
それに引き換え「さよならイエスタディ」のなんと品の良いことか。CDを買ったらTUBEのコンサートチケットが当たってラッキーだった。
当時、ベッドの下に隠したかったのが「セーラー服を脱がさないで」。こんな曲を喜んでいた高校生時代。今、敢えて言わせてもらおう。秋元康は実に気持ち悪い男だ。よって秋元康を「白ポスト」にブン投げたい。
一方「もってけ!セーラーふく」はOK。
額に入れて飾る?
カマシ・ワシントン流の「Hub-Tones」。突っ走るようなフレディ・ハバードの曲に大胆なリズムアレンジを加えている。厚みを増したアンサンブル。原曲の都会的なムードはやや影を潜め土着的な熱を放っている。なんとこの曲は十三拍子だそうな。この曲が収録された「Heaven and Earth」は名盤。
「私たちはあなたしか知らない(我らはあなたしか知らない)」は一も二もなく額縁に入れて、と。おっと、間違えるところだった。称賛しないと粛清されそうだ。
私が額に入れて飾りたい曲はクロード・ドビュッシー「アラベスク第一番」
それとエンニオ・モリコーネの「愛のテーマ」。
アストル・ピアソラの「リベルタンゴ」。
「海を見ていた午後」山本潤子(Hi-Fi Set)版。
「あまく危険な香り」田島貴男版。
「Stay My Blue-君が恋しくて」。メニコンのCMで使われた曲。
「逢いたくていま」。女性歌手の中ではMISIAが一番好きだ。
The Stylistics「You Make Me Feel Brand New」。サビ部分のコーラスが実に美しい。
TDKカセットテープ「AD」のCMでも使われた曲「Ribbon In The Sky」。スティービー・ワンダー自ら登場する印象深いCMだった。このCMはコピーも秀逸で「君は僕が見える。僕には音楽が見える」というフレーズはスティービーの類稀なる才能を端的に表している。TDKカセットテープ「AD」のCM
「響け! ユーフォニアム」のすゝめ
私はそれなりにアニメを観てきた。絶対数は少ないものの、百作品に迫る年もあったので、そこそこ観ていると自負している。
そんな私が自信を持って、青春モノの快作として推薦したいのが「響け! ユーフォニアム」だ。
高校生活は楽しいだけではない。寧ろ、痛く苦しいことばかり。今の自分では手に負えないもどかしさを抱えながらも、懸命に立ち向かう若者たちの姿にあなたは何を観るだろう。遠く過ぎ去ったあの日々の再現か、それとも憧れか。
二期第十話における久美子とあすかの対峙シーンは心が締め付けられるほどの感動を覚えた。あなたも是非その目で確かめてほしい。
「響け! ユーフォニアム」