コンビニエンスストアや飲食店、コールセンターで「こちらの商品でよろしかったでしょうか」「お会計500円になります」と告げられるたび、かすかな違和感を抱く人は多いだろう。

今では「なります」乱用を否定している私だが、十年程前には丁寧な言い回しと誤認し好感を抱いていた。よく見聞きするから無防備に身体に侵入してしまう。世間の刷り込みは恐ろしい。あなたも無意識にこのような言い回しをしてしまう瞬間はないかと不安になることがあるかも知れない。

これを書いていてふと気付いたが、誤った語義や用法はウイルスや細菌みたいなものかも知れない。本人の自覚がないまま感染や罹患をする。患者が減らないわけだ。

「〜になります」「〜となります」という、いわゆるバイト敬語は、なぜ一向に減る気配がないのか。専門家や利用者から「誤用」と繰り返し指摘されながら、都市部の接客現場やネット上のチャットでむしろ増殖を続けている。

その起因は、人口集中によるマナー意識の過剰化だと私は考える。過剰化したマナー意識で発生した「なります病」は、ITの発達により日本の僻地のみならず海外にまで蔓延するのだ。

本記事では、なります病が止まらない3つの具体的な背景を分析し、現代のコミュニケーションの歪みを明らかにする。

第1背景:人口集中がもたらしたサービス業従事者のマナー過剰適応

人口集中は「警戒心と嫌悪感」を増幅し、マナー意識を先鋭化させる

満員電車に象徴されるように、人が一ヶ所に詰め込まれる状況は「警戒心と嫌悪感」増幅させる。詳細は別記事で触れているが、少し引用しておく。

【語義掘り下げ】「国防」の意味を再考する|「国防という名の流行り病」とは「多角的侵略」の一側面劇場版の製作者が「国防=自立した国家運営をすること」あるいは「国防=予防医療」と認識していれば、ストーリーは大きく違っただろう。そして「国防という名の流行り病」なんて恥知らずなセリフは出てこないはずだ。余計なお世話だが、製作者はテーマを「国防」ではなくズバリ「軍拡」にすれば良かった。...

【都市部への人口集中は恐ろしい監視社会を生む】

(略)

人が極度に集まればどうなるか。列挙してみよう。

都市一極集中の弊害

マナーとエチケット問題の頻発
犯罪の増加
冤罪の増加
事故の増加
不信感の増大
監視環境の強化
法律や条例の厳格化

満員電車で隣の中年の口臭が酷い
ホームレスは電車に乗ってくるな
電車のドアの前に座り込む若者はケシカラン!
車内で通話するな!
化粧は家で済ませてこい
歩きスマホするな
歩きタバコするな
タバコを路上に捨てるな
みんなポイ捨てしているのにオレにだけ注意するな!
犬のフンで迷惑しています!公園に犬を連れてこないで下さい!
この人チカンです!
それでもボクはやってない
ヘルメット着用での入店はご遠慮ください
マスクがないと人と接するのが怖い
強引なナンパが多いのであの通りは歩けない
犯罪防止のためカメラを設置しました
壁伝いにドンドン響いて迷惑なんですけど!
エアコンの温度を勝手に下げないで下さい!
冷房対策に羽織物を用意するのは常識でしょ!
社内で生き残りたければ同僚を出し抜け
情報漏洩防止の観点からスマートフォンは持ち込み禁止
仕事している私に介護を押し付けるなんて封建時代みたいな態度やめてよ!
俺達忙しいし老人ホームに入れるしかないな
保育園落ちた日本死ね!!!

書き出したらキリがない。

人が極度に集まれば対立と競争が激化する。やがて人を孤独に追い込み攻撃的に変えていく。

そんな人が多数派を占め国柄を形成する。グローバリストや外国勢力にとって実に都合の良い国柄ができるのだ。
 

都市部サービス業従事者の急増

日本の総人口は減少の一途をたどっているが、東京圏への人口集中は加速している。

令和七年(2025年)時点で首都圏人口は3700万人を超え、全国民の3割を占めるに至った。この人口流動の中で特徴的なのは、地方から流入する20〜30代の単身者がサービス業に集中することである。コンビニエンスストア、飲食店、外食チェーンといった接客業の求人は、地方都市の2倍以上の比率を示す。

私の見解では、こうした環境が「なります病」や「させていただきます」敬語などの起因および温床。

地方では家族経営の商店で育った若者が、都市部のチェーン店文化に直面する。そこでは「とにかく丁寧に」が最優先。文法の正しさは二の次なのだ。結果、「お会計500円になります」という不自然な表現が標準化される

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「いわゆるバイト敬語」に関する記事では見過ごされがちだが、この人口動態こそが問題の本質。
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従来の自然な言葉遣いが、都市部のマニュアル至上主義に飲み込まれる。
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その構図が、「なります病」に代表されるバイト敬語を量産する土壌。

都市部の歪んだ定型文がITにより拡散される

人口集中によるマナー過剰適応は「なります病」を発症させた。その感染力は強く、ウェブサイトやSNSにまで伝播する。

「〜になります」「〜となります」というのは丁寧な言葉遣いの基本という歪んだ認識が出来上がるのだ。
















「とにかく丁寧に」のマニュアル文化

チェーン店研修の共通認識は「クレーム回避第一」。新人教育では「です・ます調+なります」を鉄則とし、文法解説は省略される。こうしたマニュアルは、法人研修資料として標準化されており、全国数万店舗で同時多発的に広がる。

私が問題視したいのは、「丁寧さ競争」のエスカレーション。競合他社より「より丁寧」に見せるため、表現が過剰化する。結果、「こちらの商品でよろしかったでしょうか」「お会計500円になります」という冗長表現が生まれるのだ。あなたの職場でも、マニュアルにこうしたフレーズが並んでいないか。一度確認されたい。

第2背景:IT化によるテンプレートコミュニケーションの標準化

チャット/メールの敬語テンプレート化

IT(インフォメーション・テクノロジー/情報技術)の発達は、コミュニケーションをテンプレート化したがる。コールセンターのチャット支援ツールでは、「〜になります」「〜となります」が定型的な文言として登録されている。ECサイト(エレクトリック・コマース/電子商取引/インターネットを介した販売)のカスタマーサポートでも同様で、応答時間の短縮を優先するあまり、文法精度が犠牲になる。

この現象は、2020年代のDX(デジタルトランスフォーメーション/デジタルによる変革/デジタルによる企業運営最適化)推進で加速した。企業はAI支援ツールを導入し、担当者がコピーアンドペーストする(書き写す)だけで「丁寧な応答」が完了する仕組みを構築した。しかし、そこに潜むのは「機械的丁寧さ」の罠である。人間らしい敬語ではなく「なります病」が標準化されるのだ。

AIチャットボットの影響

生成AIの台頭が事態を悪化させる。ChatGPTや類似ツールは、ネット上の膨大なバイト敬語データを学習し、それを再現する。「接客応答を生成せよ」と指示すれば、9割以上が「〜になります」「〜となります」という表現を含んでいる。これは単なる技術の問題ではなく、AIが「現代の丁寧さ」をバイト敬語として誤認している証左。

実践的な提案として、企業担当者はAI出力の「敬語チェックフィルター」を導入すべきではなかろうか。テンプレート登録前に「なります」を検索し好ましい言葉に置換するだけで、感染経路の半分を断てる。

第3背景:SNS時代特有の「見せかけの丁寧さ」文化

SNSでのパフォーマンス敬語

SNS配信者は「丁寧キャラ」を武器に差別化を図る。

YouTubeライブやTikTokで「させていただきます」「〜になります」「〜となります」などを連発する姿が、若年視聴者に刷り込まれる。こうしたパフォーマンス敬語は、親近感と丁寧さを狙ったものだが、文法崩壊を招く。

令和七年(2025年)のデータでは、フォロワー10万人以上の配信者が「〜になります」「〜となります」という表現を用いる。その頻度は1時間で平均7回。「なります病」を懸念する人の殆どが指摘しないが、この「模倣感染」が最大拡散源である。

日本語警察/言葉警察と過剰反応の連鎖

SNS上で「バイト敬語糾弾」が見られる一方、批判された側は「より丁寧に」と過剰に修正する。「日本語警察」「言葉警察」と形容される行為が皮肉にも「バイト敬語」をエスカレートさせる。悪循環としか言いようがない。

この「日本語警察」「言葉警察」が「バイト敬語」を増幅させる大きな要因。あなたは、SNSでこうした論争を見たことがあるだろう。そこから学べるのは、批判だけでは現象は止まらないということだ。

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とはいえ、私はいわゆる「~警察」には賛成。批判精神は重要だと考えるからだ。
語求(ごきゅう)
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変化した言葉遣いは社会の歪みの結果。
語求(ごきゅう)
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その歪み対し、声を上げる人がいなくなる。これこそ恐ろしい状況なのだ。
語求(ごきゅう)
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蔓延した「なります病」にはショック療法もやむなし、というのが私の立場である。
言葉の誤りを指摘される人=〇〇に洗剤を使う人私としては「分類関係なく反発するのもやむなし」という心情が若干ある一方で「誤りは条件問わず指摘し合うのが好ましい」と考えている。つまり「一部に限定すれば反論に賛成」と思いつつも、やはり好ましい表現を提案されたならば素直に従うべきという立場。ただし「なります敬語」「させていただきます敬語」「お疲れ様」などの...

なります病は「現代社会の病理」──変化至上主義への警鐘

言語変化史から見た問題の本質

明治以降、日本語はとりわけ「変化=進化=良い国造り」という安易な観念に支配されてきた。

「〜ております」「ご利用になりますよう」といった当初の誤用が、現代では標準化した歴史がある。「あらたしい」は「あたらしい」に変化し常用化した。

しかし、この寛容さが裏目に出ていると思えてならない。都市集中・IT化・SNS普及を無批判に受け入れ、「新たなコミュニケーションだから仕方ない」と諦める風潮が、なります病を固定化するのだ。

言葉は変化して当然という観念は、明治以来百年の積み重ねで強化され普遍化、いや神話化されつつある。だが、すべての変化が質の向上とは限らない。変化しない選択肢を排除する体質こそが、言語の病理の本質である。

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「言葉は生き物」という観念は平和ボケの産物である日本語の「適応」を続けてきたのは良い風習、「良習」と捉えることができる。「適応」を「現実主義」「プラグマティズム」と認識している人も少なくないだろう。ただ言語に対して「適応」「現実主義」「プラグマティズム」を突き詰めるとどうなるか。何十世代後か何百年後かはわからないが、形だけで中身はスッカラカンな日本語らしき何かになる...

「変化して当然」という観念を打破する現実的判断基準

今こそ「新たなものは良い」という観念を否定し、優れた表現を再評価せねばならない。それは必ずしも太古の表現とは限らない。しかし、例えば「かしこまりました」は明治以前から不変の適切さを持つ。場面別比較表を以下に示そう。

場面 伝統/従来 バイト敬語 推奨
会計 500円でございます 500円になります 伝統/従来
確認 以上でよろしいでしょうか 以上でよろしかったでしょうか 伝統/従来

変化至上主義に抗う言葉選び──「古くても優れた表現」の再評価

伝統敬語の「不変の価値」を再発見する

「〜でございます」「承知いたしました」は、少ない言葉で深い敬意を伝える日本伝統の結晶である。現代人が忘れたのは、この簡潔さの美意識だ。「ダジャレ」ではないが、不変(ふへん)の表現ほど普遍(ふへん)的な信頼を生む。試しに上司や顧客に「かしこまりました」と返してみよ。反応は格段に異なるはずだ。

「変化しない勇気」の現場実践法

一週間「なります禁止チャレンジ」を実施してみては如何だろうか。録音アプリで確認し、言い換え練習をしても良い。

組織ではマニュアルから「なります」を全削除。不変マニュアルを作成し、少数店舗で実証する。これは一時的でも構わない。どうしてもを必要な状況を見極めるために、一旦「なります全削除」を実行することを勧める。

語求(ごきゅう)
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「なります病」が蔓延した世の中において、これが逆に「差別化」する契機と捉えるべき。

組織・社会レベルでの「日本語防衛線」構築

マニュアル改訂と研修改革

「正確さ至上主義」へ転換せよ。研修で文法解説を義務化し、「なります病ゼロ認証」を導入。排除店舗を表彰する逆転システムである。

教育現場・メディアへの提言

学校で不変敬語を必修化。NHKは模範放送を強化せよ。とはいえ、もはや「HNK」をはじめとする発信媒体には期待をしていない。

あとは政府レベルでの対応も記しておこう。「日本語防衛省」を作るのは大げさかも知れないが、官民認証機関を提言するくらいの意欲が欲しいところ。

誤用の実例と正しい表現

「なります」の誤用実例と、丁寧さを損なわない従来の表現を一覧で示す。これらは日本語の伝統的あるいは従来の丁寧語や敬語に基づくもの。

「なります」誤用の実例と好ましい代替表現

「500円になります」

「500円です」
「500円でございます」

「こちらが入り口になります」

「こちらが入り口です」
「こちらが入り口でございます」

「お部屋は3階になります」

「お部屋は3階です」
「お部屋は3階でございます」

「こちらがメニューになります」

「こちらがメニューです」
「こちらがメニューでございます」

「自動音声でのご案内となります」

「自動音声でご案内します」
「自動音声でご案内いたします」

「定員になり次第、終了となります」

「定員になり次第、終了します」
「定員になり次第、終了いたします」
「定員に達した時点で、終了いたします」

使用上のポイント

ご覧の通り「です/ございます」で十分丁寧に表現できる。「なります」は状態変化を表す動詞であり、静的な事実伝達には不要。過剰敬語を避けられる。

「定員になり次第、終了となります」

「定員になり次第、終了します」
「定員になり次第、終了いたします」
「定員に達した時点で、終了いたします」

最後の実例に注目していただきたい。

定員「になり次第」はそこまで不自然ではない。一応、状態変化もしている。よって「なります」でも構わない。徹底的に避けるなら「定員に達した」という表現に置き換える。

一方、 「終了となります」「します」「いたします」を用いた方が好ましい。

「なります病」を懸念する人たち

最後に「なります病」を問題視している人たちをご紹介しよう。

なります病

こちらはグラウンドになります
長崎県の端島(軍艦島)の上陸禁止解除のニュースにて島内を紹介するリポーター氏の発言。

学校跡地に立って、
×こちらはグラウンドになります
◎ここはグラウンドだった場所です(「であります」なら尚可)

【解説】いつグラウンドになるのでしょうか?もうグラウンドにはなりません。
*「春になります」
*「二十歳になります」
*「弁護士になります」
*「グラウンドになります」
グラウンドにはなれません。こう書くと、4つ目がいかに滑稽であるかすぐに分かるのです。
 

「こちら100円になります」はどうすれば撲滅できるの?

「です」→「ございます」に置き換える
まず、たいていのものは「ございます」で代用がききます。

「~になります」と口から出そうになったら、
とにかく「です」や「ございます」に直しましょう。冒頭の三例を直してみましょう。

「こちら、コーヒーになります」→「こちら、コーヒーです」
「お手元にございますのは、本日の資料になります」→「本日の資料でございます」
「午後からは自由参加の懇親会となります」→「懇親会です」
できましたか?簡単ですよね?
 

とか弁は人を不快にさせる いまどきの言葉 「OOになっております」

たとえば「こちらが説明書になっております」のように、丁寧な表現に聞こえるが、実は使う必要の無い言い回し。

「こちらが説明書です」と表現すればよく、もっと丁寧に表現する必要があるときは、「こちらが説明書でございます」と表現すればよい。このような言い回しは「ファミ・コン言葉」と呼ばれている。
 

聞くとゾワゾワッとする嫌いな言葉

「○○のほう〜」「○○になります」バイト敬語もレストランやファストフード店などの飲食店の接客で話される「〜のほう」「○○になります」「○○でよろしかったでしょうか」というバイト敬語も「いい加減やめてもらいたい」(noname#14805さん)との声が。また直接的な表現を避け、オブラートに包んだ言い方に対する嫌悪感も。
 

気になる耳障りな言葉

【~なります】
あなたは会社の商品を説明するとき「これが最新の加工機になります」と言ってませんでしょうか。

説明を聞かれておられるお客様の何人かは即座に「?」。
機械の性能が理解できないのではなく、あなたに?です。

あなたがレストランで注文した料理が運ばれてきたとき「~なります」と言われたとき、どう思いますか。なにも感じませんか?

先輩店員も同じように「~になります」と言っていると思います。こうした、言葉をはじめお皿をポンと置くようなマナーの悪い店は味もよくないので二度と行きません。

多分、柔らかく伝えたいという間違った使い方が原因かな、と思います。言葉は明確に「~です」とハッキリ言う癖を身につけましょう。それがあなたの商品に対する自信にも繋がり、お客様のあなたへの信頼にもなるでしょう。
 

変なことば「〜になります」???

実はこの「〜になります」という言葉は「ファミレスことば」「コンビニことば」「アルバイトことば」と言われていて、丁寧に喋ろうとして間違ったのだけれど、なんか心地よく聞こえるからそのまま浸透してしまったというものだそうです。

いや……「気持ち悪い」のでやめてください。
基本的な判断基準は「〜です」に言い換えられるものに「〜になります」を使ったら間違いです。

で、例を出すと…
◯ハンバーグセットです
×ハンバーグセットになります

◯こちらが入り口です
×こちらが入り口になります

◯その肉まんは95円です
×その肉まんは95円になります
(今は80円だけれど、95円に変化するという意味なら合っています)
という感じ
 

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語求(ごきゅう)
【反日憂国者】 開国後の日本にとって言語は重要な防壁になりました。それに気付かない日本人に向け、国防の観点から「鋭敏な言語感覚」の重要性を訴えています。言葉の変化を手放しで受け入れる人達へ。あなた達「言葉の変化全肯定論者」が如何に軽薄で危険であるかを独自の視点で暴き出します。その活動が、日本を少しでも延命させる一助になると信じて。「言葉は生き物」「言葉に寛容になれ」と心無い批判をされた人へ。あなたの言語感覚は間違っていない。そんな奴らに屈するな。国防に必要なのは核武装と言語の保守。アイコンはユルいが50代の筋トレおじさん。