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言語に関する考察

【語義掘り下げ】「老害」の意味を再考する4.|技術進歩と「老害」

「老害」についてあなたはどう思うだろう。本当に老人、高齢者が「害」を及ぼしているのか。もしそうならその「害」とは具体的に何なのか。腰を据えて考えてみたい。

この言葉に関しては記事を複数に別けて論じることにする。当記事はその四つ目。主題は技術進歩と老害の関わり。

パイドロスから攻殻機動隊まで

文字はケシカラン
スマホ/スマフォを見るとバカになる
外部記憶(電脳化前提)がなければ着いて行けない会話

これらには共通する警告がある。それは何か。

利便と堕落への警告

プラトンの文字/記録に対する警告

プラトンの「パイドロス」。ソクラテスとパイドロスとの会話を記した書物だ。プラトンがソクラテスを通じて主張したかったのはこんな感じだろう。

プラトン
プラトン
記録に頼ると満悦する
プラトン
プラトン
満悦するとバカになる
本の中で文字批判しているこいつは矛盾しているだろ

確かに文字批判を「書き残した」のは矛盾している。ただ、記録行為は怠惰の前段階という警告は正しい。

「使い方次第」「使いこなせば良いだけ」と軽く言う人がいる。ところが、実際に使いこなしているのは、ほんの一握り。文字批判をしたプラトンは、そのほんの一握りに入るのは間違いない。

安定期に入るのは「多くの被害と犠牲を出した後」ということを「みんなすぐに忘れ」次の便利さに飛びつき、こう繰り返すのだ。「使い方次第」「使いこなせば良いだけ」と。

パイドロス (岩波文庫)より

ソクラテス
よろしい。ぼくの聞いた話とは、次のようなものだ。エジプトのナウクラティス地方に、この国の古い神々のなかのひとりの神が住んでいた。この神には、イビスと呼ばれる鳥が聖鳥として仕えていたが、神自身の名はテウトといった。

(略)

テウトはこう言った。

「王様、この文字というものを学べば、エジプト人たちの知恵はたかまり、もの覚えはよくなるでしょう。私の発見したのは、記憶と知恵の秘訣なのですから。」しかし、タモスは答えて言った。

「たぐいなき技術の主テウトよ、技術上の事柄を生み出す力をもった人と、生み出された技術がそれを使う人々にどのような害をあたえ、どのような益をもたらすかを判別する力をもった人とは、別の者なのだ。」

(略)

「それはほかでもない、彼らは、書いたものを信頼して、ものを思い出すのに、自分以外のものに彫りつけられたしるしによって外から思い出すようになり、自分で自分の力によって内から思い出すことをしないようになるからである。

じじつ、あなたが発明したのは、記憶の秘訣ではなくて、想起の秘訣なのだ。また他方、あなたがこれを学ぶ人たちに与える知恵というのは、知恵の外見であって、真実の知恵ではない。」

すなわち、彼らはあなたのおかげで、親しく教えを受けなくてももの知りになるため、多くの場合ほんとうは何も知らないでいながら、見かけだけはひじょうな博識家であると思われるようになるだろうし、また知者となる代りに知者であるといううぬぼれだけが発達するため、つき合いにくい人間となるだろう。」

パイドロス
ソクラテス、あなたは、エジプトの話でも、また気の向くままにどこの国の話でも、らくらくと創作されますね。

 

現代の会議で「メモするな!」という意見は正しいか

現在でも研修や会議で「メモするな!」と叱りつける人がいる。あなたはこれに賛成だろうか。

私は反対。現代はどうしても脳内の記憶だけでは心もとない。脳内記憶を開く「鍵」としてメモは欠かせないのだ。しかし、実際「記録する」というのは非常に高度な行為。

記録すべき事柄の選別
記録中に進む話を聞き漏らさない集中力

これらが要求される。故に「メモするな!」と叱りつける人の気持には同感できる。

スマホ/スマフォを見るとバカになる


通信/通話

道案内

買い物

防犯

音楽を聞く/読書/動画視聴/遊戯

撮影/記録

他多数

スマートフォンはもはや生活に欠かせない複合機と思っている人が大半だろう。私も概ね認める。生活に不可欠になるよう、環境が作り変えられては抗いようがない。

スマートフォン導入時においても「使い方次第」「使いこなせば良いだけ」という楽観論が支配的。

確かにこんな利用方法は好ましい。

好ましいスマートフォン利用法

家の防犯カメラと連動させる
古事記/万葉集/ニコマコス倫理学を読む
茂木誠先生の歴史講義を観る

しかし、実際はこんなものだろう。

スマートフォン利用の現実

LINEで異性と揉める
アニメ/映画/アダルト媒体に没頭する
オンラインゲームに大金をつぎ込む
少しでも得になる購入方法に時間を費やす
ニュースサイトに下らないコメントをする
芸能人やミュージシャンの抗議行動に賛同する

語求(ごきゅう)
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「使い方次第」「使いこなせば良いだけ」と軽く言えない恐ろしさがスマートフォンには潜んでいる。
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深刻な被害から目を背けるように、生活に欠かせない機器としての技術開発は止まらない。
語求(ごきゅう)
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これが如何に悲劇的か考える間もなく、依存度を高める環境構築が進む。
語求(ごきゅう)
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いわゆる「IT(情報技術)」の機器の発展は、かつての産業革命後の混乱と同質。
語求(ごきゅう)
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混乱の様を福澤諭吉「民情一新」から引こう。

福澤諭吉「民情一新」 緒言より

4つの発明が民情を一新した

(略)

本編は、主にこの発明工夫が民情(民心)に及ぼした影響の様子を論じて、蒸気船車、電信、郵便、印刷の 4項目に区別したが、実際は印刷も蒸気機関を用い、郵便を配達するにも蒸気船車を用い、電信も蒸気によって実際の役に立つので、これを単に蒸気一つだけの力にまとめて、人間社会の運動力は蒸気にあると言うこともできる。

近年の文明は蒸気の文明ということもできる。蒸気がひとたび世間で行われて以来、実際に旧物を転覆したのは勿論のことで、人事の是非得失を論じるにも昔の賢者を参考にして判断することもできない。まさに今日は世界が一新された最初の年ということもできる。

蒸気電信の力は古いものを廃し、すべてを変革し尽くす

(略)

蒸気電信の勢力はこのようなものだが、特に西洋人の私有物ではない。発明は西洋だが、西洋人も自らこれを発明し、今日少しだけその効用を試みてその勢力が強大なことに驚き、また狼狽している。

急速に進む民情の変化

前に述べたとおり、西洋人は蒸気電信の発明に出会ってまさに狼狽している。

その狼狽とは何か。民情の変化にある。

老人は少年が活発でその心事が早熟なことに驚き、金持ちは貧者の謙虚のなさを憤り、また一方ではその思想が優れていてしばしば言論に道理があるのを見て感服し、政府は人民に苦情が多く満足することがないことを心配し、

また一方ではその気力が活発でともに国を守るに十分であるのを見て喜び、喜ぶがごとく、憂うるがごとく、憤るがごとく、感服するが如くで、要するに、ただ狼狽するにほかならない。

かの英国の風俗は最も今日の民情に適するといって、なおその上に民情変化の兆候を見せて、人夫がストライキといって、仲間と結託して賃金を高くするために職に就かずに雇主と交渉するなどの風が近来ますます盛んだと言う。

貧しく、卑しい者の心事が次第に異常になるのを見ることができる。

チャーチスト運動と社会主義は人民の不平の兆候

(略)

ところで、不思議なことは、我が日本の普通の学者論客が西洋を盲信することである。

十年来、世論の向かう方向を考えると、ひたすらに西洋の事物を称賛し、敬い慕い、心酔し、甚だしいのはこれに恐怖し、少しも疑いの念も抱かず、一も西洋、二も西洋といって、ただ西洋のやり方を手本にして、

小は衣食住居のことから大は政令法制のことまで、疑わしいのは西洋を標準にして得失を評論する者である。甚だ異様である。

今日の西洋諸国は、まさに狼狽して方向を迷っている。他で狼狽するものをもってきて我々の進む方向の標準にするのは、狼狽の最も甚だしいものではないか。
 

人は新たな道具や仕組みを欲する。その欲求は終わりを知らない。

「それは危険だ」という声に対し、嘲笑を含んだ楽観的な意見が圧倒し支配する。

生活が安定する
便利になる
すぐに危険よりも恩恵が上回る
新たな才能や技術を潰すつもりか
既存の手法にしがみつくのは社会にとって障害

スマートフォンに象徴される「新たな便利アイテム」は、マナー意識を混乱させ、購買意欲を煽り、喜怒哀楽を増大させ、犯罪を複雑化させる。それらの悪しき事態にスマートフォン関連の技術向上で対処する。このモグラ叩きに終わりはない。

何故なら「みんなすぐに忘れる」からだ。

我々がスマートフォンを使いこなせる日はいつくるのだろうか。いや、本当に使いこなせるシロモノなのだろうか。何をもって使いこなせたと言えるのだろうか。

この記事を書いている時点でのスマートフォンとはこのようなものだ。

脊髄反射を促す機械
情緒を増幅する機械
善悪二元論に収斂させる機械

語求(ごきゅう)
語求(ごきゅう)
たゆまず進む技術の開発と革新が人を分断し「老害判定」を増やすのだ。

外部記憶(電脳化前提)がなければ着いて行けない会話

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX「The Laughing Man」の終盤にこんなセリフが出てくる。

荒巻大輔
荒巻大輔
外部記憶装置なしにはさっぱり着いて行けん会話だな。

この作品の世界では「電脳化」が当たり前であり「未電脳化/非電脳化」は少数派。

「電脳化」を乱暴に解説すれば「脳のスマートフォン化」。機械いらずでクラウドサービスにアクセスできると言えばイメージしやすいだろうか。「RD潜脳調査室」の主人公、蒼井ミナモも「電脳化」で回る社会における「非電脳化」の少数派だった。

このセリフも「パイドロス」の文字や記録に対する警告に通じるものがある。

電脳化された人は必死で歴史や数式を覚えなくて済む。PCやモバイル機器の出番も激減する。夢のような世界だ。

もちろん、重要な試験では「外部記憶装置へのアクセス制限」が掛かるだろう。しかし、下記のような意見が多数を占め「外部記憶装置へのアクセス制限」はおろか、試験すら撤廃されかねない。

業務や任務の遂行において外部記憶装置が欠かせない社会。アクセス制限下での試験に何の意味があるのだ。
そんな時代遅れの制度を頑なに守ろうとする奴らは「老害」だ。
語求(ごきゅう)
語求(ごきゅう)
電脳化した上での外部記憶装置の利用。それは一見、夢のような世界。
語求(ごきゅう)
語求(ごきゅう)
その実は、人がバカになり豊かな感性や寛容さを失う世界なのだ。

「老害」の増加は崩壊への道

技術進歩と「老害」の関わりについて論じてきた。「老害」と呼ばれる側は、新たな技術や概念の犠牲者と言えないだろうか。

「老害」という犠牲者が増えることは社会崩壊への道だと私は考える。あなたはどう考えるだろうか。

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語求(ごきゅう)
【反日憂国者】 開国後の日本にとって言語は重要な防壁になりました。それに気付かない日本人に向け、国防の観点から「鋭敏な言語感覚」の重要性を訴えています。言葉の変化を手放しで受け入れる人達へ。あなた達「言葉の変化全肯定論者」が如何に軽薄で危険であるかを独自の視点で暴き出します。その活動が、日本を少しでも延命させる一助になると信じて。「言葉は生き物」「言葉に寛容になれ」と心無い批判をされた人へ。あなたの言語感覚は間違っていない。そんな奴らに屈するな。国防に必要なのは核武装と言語の保守。アイコンはユルいが50代の筋トレおじさん。
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